エメラルドの処理
エメラルドは造山活動やプレートの沈降など、化学組成や条件が結晶化に適した構造体付近で形成されます。このような地域は高圧化にあり、岩石の塑性変性が起こります。従って多くのエメラルドには亀裂が多く見られます。
エメラルド中に存在する美しいインクルージョンの多くもまた、地質学的作用に伴うものです。そのようなインクルージョンは、トレードネームとしてエメラルドの「ジャルダン(庭)」と呼ばれています。
エメラルドの亀裂は裸眼でも確認することができます。このため、その透明度を向上させるためにエメラルドは無色、または有色のオイルによる含浸処理が古代から行われてきました。亀裂のないエメラルドや透明度の改善処理が施されていないエメラルドは非常に希少です。
エメラルドの人為的処理は何も新しいものではなく、プリニウスの記述やストックホルムパピルス(紀元前400年頃作と推定)によれば「スマラグディ(エメラルド)は多くが自然の色を持っているが、薄めていないワインと緑のオイルで改善される1」と記されています。
エメラルドはクラリティと透明度を改善するために、一般的に裂け目を含浸して目立たなくする人為的処理が施されています。含浸剤としてはオイル、ワックス、天然樹脂(例:カナダバルサム)、人工樹脂などが使用されます。エメラルドの購入者は国際貴金属宝飾品連盟(CIBJO)やラボ・マニュアル調整委員会(LMHC)に定義されたエメラルドの人為的処理の開示に関するガイドラインに精通していることが求められます。
SSEFでは次の二つを通常区別しています:
伝統的含浸剤;オイル(例:シダーウッド)、天然樹脂(例:カナダバルサム)、ワックス(例:パラフィン)
近代的含浸剤;人工樹脂(例:エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂)
未処理 vs. 処理 以下の写真は含浸剤を除去したエメラルド(左)、再度オイルを充填し亀裂を目立たなくしたエメラルド(右)を示しています。
近代的含浸剤(人工樹脂)は様々な商品(例:Opticon, Permasafe, Gematrat, excel)が存在します。これらの樹脂は一般的に硬化するので耐久性が高く長持ちしますが、一方で細かい亀裂などから完全に除去するのは非常に困難です。
伝統的含浸剤(例:シダーウッドオイル、カナダバルサム、パラフィンワックス)を使用した透明度を向上させる処理は古くから行われています。これらの含浸剤は時間と共に徐々に乾いて揮発してしまい、それに連れて亀裂が目立ってくるため、再度含浸処理を施す必要があります。
そのエメラルドの特徴に応じて伝統的充填剤が適しているものもあれば、近代的充填剤が適しているものもあります。
含浸剤の種類によってエメラルドの価格は影響されます。従って含浸剤がどのような物質か、その量はどれだけかを正確に判定することが重要です。この判定を行うには視覚的方法(例:顕微鏡観察や紫外線観察)や分光法(例:FTIR)を使用します。
SSEFではエメラルドの分析時に存在している含浸剤の種類とその量について開示するポリシーをとっています。エメラルドに使用される含浸剤の量については、LMHCの基準に基づきSSEFは次のように定義しています:
- 亀裂におけるクラリティ修正が分析時に認められない
- 亀裂における微量のオイル(または人工樹脂等)が分析時に認められる
- 亀裂における中程度のオイル(または人工樹脂等)が分析時に認められる
- 亀裂における著しいオイル(または人工樹脂等)が分析時に認められる
1 出典:Barney et al., 2006
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